エンジニア関連の資格はたくさんあります。年収1000万を目指すのに資格は必要なのでしょうか?ベンダー資格や国家資格のどちらも保有し、大手SIerとWEB系企業、事業会社と渡り歩いてきた筆者がその必要性を述べます。
エンジニアとして年収1000万を達成するのに資格は不要
私自身、AWSの資格やIPAの高度情報処理技術者の資格も保有しています。また、AWSやCisco,Oracle,RedHat系の資格も持っています。これらの資格はすべて大手SIer時代に取得したものです。大手SIerの時にこれらの資格を取得したのは、会社に強制されたり、昇格の条件として指定されていたからです。何年目までに高度情報処理技術者を持っていないと昇格できないなどの条件があったのです。しかし、これらの資格が転職や自身の年収を上げるためには、全く役に立ちませんでした。WEB系企業に転職し、それから事業会社へと渡り歩きましたが、これらの資格が評価されたことは全くありません。そして、私自身エンジニアの採用も行なっていますが、これらの資格を保有していても特段評価しません。いっぱい取得していたら、マニアだなぁーと思うくらいです。では何が重要か?
ずばり業務経験です。
資格をいくら持っていても、採用する側はそれだけでは信用できないことをわかっています。結局のところ、スキルを確認するのは業務経験なんです。「業務経験はありませんが、IPAの資格をコンプリートしています」という人がもし応募してきても書類選考の評価は高くありません。それよりも、個人サービスを作っていたりする方のほうが評価でき、よっぽど面接してみようという気持ちになります。私自身も今は資格の勉強は一切やっていません。そんなことしている暇があったら、家で触ったことない言語でコードを書いたり、自分でプロダクトを作ったりしています。そのほうがエンジニアの市場価値が上がることが今までの転職でわかっているからです。
では資格はいらないのか?
これは業界によります。SIer以外の業界では資格取得は不要です。SIer以外では資格取得に時間をかけるくらいなら、現場で良い仕事をもらって職務経歴書にかける業務経験を積んだほうが良いです。業界別で詳細を見ていきましょう。
SIer業界
SIer業界では、資格取得が昇格の必須条件となっているケースが多いです。また、入社後に資格を取得するとお金が出る会社もあるでしょう。こういった会社では取得したほうが良いというより、昇格のために取得せざるを得ないでしょう。しかし、中途採用などになるとSIerは技術力は求められませんが、マネジメント経験などの実務経験が求められます。
WEB業界
資格は必要ないです。仮にめちゃくちゃ高難度の資格を多数持っている人が面接に来ても、他の人と同様にコーディングテストを突破し、技術面接で回答ができなければ入社もできない会社が多いでしょう。重要視されるのは、手を動かせるスキルと確かな実務経験であって、紙の上でできるお勉強ではありません。私が在籍していた企業でもそれは同様でした。WEB系企業で働きたい人は資格取得に多くの時間を割いてはいけません。あくまで資格は学習のきっかけと捉えて、とにかくコードを書くなり、自分でAWSやGCPのアカウントを作って触るなり、手を動かして学習してください。これだけ自分で容易に学習ができる世の中になっているのに、仕事でも自分でも手を動かすことをしていない人は入社できません。
事業会社
WEB業界と同じく資格は求められません。エンジニアを雇うような事業会社はDXを進めていく上でWEB業界がやっている「自分たちのビジネスをデジタルで行うこと」をやりたいのです。そうなると考え方が、WEB業界と似てきます。資格を持っている人ではなくて、手が動かせる実務経験がある人が欲しくなります。よって、資格が評価されることはありません。一方で、社内SEのようなポジションでは資格を求められることもあると思いますが、このメディアを読む人たちはそこを目指してはいないでしょう。
資格は学習のきっかけとして使い、転職で役に立つと思わないこと
上記の通り、資格が大きな意味を持つのはSIer業界だけです。それ以外の業界では、業務経験が大きな意味を持ちます。SIerでも技術的な経験は求められませんが、マネジメントの業務経験は求められるでしょう。つまり、どの業界でも重要なのは業務経験です。業務経験のないエンジニアがいくら資格とっても書類は通過できません。まずは、業務経験が積める環境に何とか身を置くことに全力を注いでください。医者や弁護士になるのとは違って、エンジニアになるのに必須の資格などないのですから。
一方で資格を取ることは悪いことではありません。ITの知識が浅い人が基本情報や応用情報を受けて、基礎的なIT用語を覚えたり概念を知ることは実務でも役立ちます。資格そのものが評価につながることはありませんが、資格を学習のきっかけとし自分の知識を蓄えるという観点では資格は有用だと考えています。私自身もAWSの資格などは初めてAWSでシステム構築する上でものすごく役に立ちました。体系的で全体を俯瞰した知識があった上でAWSに触るのと、何も知識がない前提で触るのでは理解の進みが違うからです。なので、転職の武器ではなく、学習の一環として資格を考えるようにしましょう。
おすすめ資格ランキング
私個人が取得してよかったなーと思う資格と取得する必要なかったなーと感じた資格ランキングです。取得してよかったなーと思う種類の資格は1つしかありません。それくらい私のキャリアの中では資格は意味のないものが多かったです。
順位 | 資格 | 理由 |
1 | AWS、GCPの資格 | インフラエンジニアだけでなく、今システム開発する上でパブリッククラウドの知識は全エンジニアが必須です。インフラがわかるアプリエンジニアとわからないエンジニアでは開発速度がまるで違います。実際に知識としてもすぐ現場で役に立ちます。 |
順位 | 資格 | 理由 |
1 | ベンダー資格 | Cisco、Oracleなどのベンダー資格です。全く役に立ちませんでした。理由はクラウドです。クラウドは低いレイヤーを抽象化してくれるため、インフラエンジニアもCiscoの機器などをいじったりすることが減っています。データベースにしてもOracleを使ったのは、SIer時代だけでクラウド環境ではAWSであればAuroraなどが主流です。こういった流れを受けて、低レイヤーを意識する必要が薄れてきました。 |
2 | 情報処理技術者試験 | 転職や年収アップの観点では役に立ちませんでした。社内の昇進の条件とされることの多いSIer以外ではあまり役に立たないでしょう。私ももうこの試験を受けることはないと思います。一方で、ITの基礎知識がない人には体系的に知識を得るためには悪くない資格だと感じています。学習のためのツールとして使うには悪くありません。しかし、WEB系企業や事業会社に在籍しDXを推進する人材であれば、この資格の学習時間を実務や個人で技術に触れる時間、ビジネスの勉強をしてエンジニアリング以外の知見を得る時間に当てた方がよっぽどマシです。 |
AWSなどのクラウドの資格は得た知識が実務に役立ったので、非常に有用でした。何か良い資格ないですか?と問われたら、パブリッククラウドの資格取得を勧めます。特にAWSかGCPでしょうか。Azureもありますが、AWSやGCPと比較してあまり利用している会社が多くありません。また、今後アプリのエンジニアもクラウドの知識は必須です。そういった観点ですべての人が取得しても損はない資格です。
一方で、クラウド以外のベンダー資格は必要性が感じられませんでした。理由はクラウドがベンダー資格で学べる低いレイヤーの技術を抽象化してしまい、意識することが少なくなったからです。それどころか今後どんどんインフラの低レイヤーを意識することが少なくなっていくと思います。そのためのサービスをAWSやGCPが提供してくれるのです。確かにオンプレミスのサーバが残っていたりする企業は残っていますが、基幹システムもどんどんクラウドに移行していくでしょう。そうなった時にネットワークエンジニアなど現在低レイヤーを担っているエンジニアもそちらにシフトせざるを得ないでしょう。というか、もうすでにシフトしている人はしています。よって、ベンダー資格に力を入れるくらいなら、クラウドの資格の勉強をしてクラウドの知識を身につけるほうが最短距離だと思います。クラウドを使う中で低レイヤーの知識が必要になったら、そこだけ勉強すれば良いです。
情報処理技術者試験はWEB業界では、不要でしょう。頑張って取得しに行くのはSIerのシステムエンジニアです。私も必要がないので、二度と受けないです。転職にも役立ちませんでした。私が面接する時も評価することはありません。資格より実務経験を重視します。しかし、ITの基礎知識がない人には体系的に基礎知識を学べるという観点で有用な場合もあるでしょう。知識を増やすための手段として取得を目指すのは悪くない資格です。また、ベンダー資格を取得するなら、まだこちらの資格に時間をかけたほうが良いと思います。ベンダー資格は、そのベンダーの製品の学習も必要になるため、その時間が勿体無いためです。また、更新も必要です。情報処理技術者試験はセキュリティを除いて更新も不要なため、その点もベンダー資格よりメリットがあります。
まとめ
資格は転職や年収アップにおいてあまり役に立ちません。しかし、知識を得るための学習のきっかけとして資格取得を目指すことは悪くないです。もし、何らかの資格を取得したいならAWSやGCPのクラウド系の資格がオススメです。理由は下記です。
・情報処理技術者試験などと比較して資格で得た知識が実務に役立つこと
・あらゆるシステムでクラウド化が進んでおり、低レイヤーの仕事は一部のエンジニアに限られる。そのため、クラウド以外のベンダー資格を取るより将来性がある。
いずれにしても実務経験が転職においては重要です。資格にこだわりすぎず、実務経験が積める場所を探し、より良い仕事を任せてもらえるようすることに労力を使いましょう。年収1000万越えのエンジニアを目指すのに資格は必須ではありません。資格を取得することを目的にせず、自らのスキルを高めるためのツールとして資格の勉強をしましょう。
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